2026年8月28日

「サッカーの練習が終わると膝が痛い」
「走ると膝のお皿の下が痛い」
「最近、膝を痛がることが増えてきた」
サッカーをしているお子さんに、このような症状はありませんか?
成長期の子どもが膝を痛がると、
「成長痛だから大丈夫」
「練習のしすぎでしょう」
「少し休めば治る」
と思われがちです。
しかし、サッカーをしている子どもの膝痛には、オスグッド病をはじめ、成長期特有のスポーツ障害や、膝蓋大腿関節周囲の痛み、離断性骨軟骨炎、半月板・靱帯損傷など、さまざまな原因があります。
特に成長期は、骨や筋肉がまだ発達途中です。
ダッシュ、キック、ジャンプ、着地、急停止、方向転換を何度も繰り返すサッカーでは、膝に大きな負荷がかかります。
大切なのは「膝が痛い」という症状だけではなく、
「膝のどこが痛いのか?」
「いつ痛むのか?」
「ぶつけたり、ひねったりしたのか?」
を確認することです。
今回は、サッカーをしている子どもの膝痛について、痛む場所から考えられる原因、治療、リハビリ、サッカー復帰までわかりやすく解説します。
サッカーをしている子どもは、なぜ膝が痛くなる?
サッカーでは、
-
ダッシュ・キック
-
ジャンプ・着地
-
急停止・切り返し
-
相手選手との接触
を何度も繰り返します。
そのため、膝には「繰り返しの負荷による障害」と「1回の外傷によるケガ」の両方が起こります。
さらに子どもには、大人にはない骨端線や骨端核など、成長に関係する未成熟な部分があります。
急激に身長が伸びる時期には、骨の成長と筋・腱の柔軟性とのバランスも変化します。
若年サッカー選手のシステマティックレビューでは、成熟度、神経筋コントロール、疲労・回復不足、トレーニング負荷、過去のケガなど複数の要因が傷害リスクに関係すると報告されています。
つまり、
「身体が成長している」+「サッカーの負荷が大きい」+「十分に回復できていない」
という状況が重なると、膝にトラブルが起こりやすくなります。
膝の「どこが痛いか」が重要!
子どもの膝痛を考えるとき、非常に役立つのが痛みの場所です。
大まかには、
① 膝のお皿の少し下が痛い
→ オスグッド病
② 膝のお皿の一番下が痛い
→ Sinding-Larsen-Johansson病
③ 膝のお皿の周囲・奥が痛い
→ 膝蓋大腿関節周囲の痛み
④ 膝の中・奥が痛い
→ 離断性骨軟骨炎など
⑤ ひねってから膝が痛い
→ 半月板・靱帯損傷など
というように、ある程度原因を絞る手がかりになります。
ただし、痛む場所だけで病名を確定することはできません。
① 膝のお皿の下が痛い|オスグッド病
サッカーをしている成長期の子どもで非常に重要なのが、**オスグッド病(Osgood-Schlatter disease)**です。
膝のお皿から少し下にある、すねの骨の出っ張りを**脛骨粗面(けいこつそめん)**といいます。
太ももの前側にある大腿四頭筋が収縮すると、その力が膝蓋腱を通じて脛骨粗面へ伝わります。
サッカーでは、
走る・ジャンプする・ボールを蹴る
という動作を繰り返すため、成長途中の脛骨粗面に牽引ストレスが繰り返しかかります。
これによって痛みや腫れが生じるのがオスグッド病です。
典型的には、
-
膝のお皿より少し下が痛い
-
脛骨粗面を押すと痛い
-
膝の下が出っ張ってきた
-
ダッシュで痛い
-
ボールを蹴ると痛い
-
ジャンプすると痛い
-
しゃがむと痛い
といった症状がみられます。
2025年のシステマティックレビューでは、オスグッド病のある10~16歳では、大腿四頭筋・腓腹筋・ヒラメ筋の硬さや膝伸展筋力などに特徴がみられることが報告されています。
したがって、痛い膝だけを見るのではなく、太もも・ふくらはぎなどを含めて評価することが重要です。

② お皿の一番下が痛い|Sinding-Larsen-Johansson病
オスグッド病と間違えやすいのが、**Sinding-Larsen-Johansson病(シンディング・ラーセン・ヨハンソン病)**です。
こちらも成長期のスポーツ選手にみられるオーバーユース障害ですが、痛む場所が違います。
オスグッド病が脛骨粗面に痛みを起こすのに対し、Sinding-Larsen-Johansson病では主に膝蓋骨(お皿)の下端に痛みが生じます。
走る、ジャンプする、キックするといった動作で痛みが強くなります。
「お皿の下が痛い」という言葉だけでは両者を混同しやすいため、実際にどこを押すと一番痛いのかを確認することが大切です。
2026年の小児・思春期の非外傷性前膝部痛に関するレビューでも、オスグッド病、Sinding-Larsen-Johansson病、膝蓋大腿関節痛などは、成長期の前方膝痛を考えるうえで区別すべき病態として扱われています。

③ 膝のお皿の周囲・奥が痛い
「膝のお皿の周りが痛い」
「膝の奥が痛い」
「階段やスクワットで痛い」
という場合には、膝蓋大腿関節周囲の痛みを考えます。
膝蓋骨は、膝を曲げ伸ばしするときに大腿骨の上を動きます。
走る、ジャンプする、しゃがむなどの動作では、この部分に大きな力が加わります。
サッカーでは特に、疲労して下肢のコントロールが悪くなった状態で、ダッシュ・ストップ・方向転換を繰り返します。
このような場合には膝だけでなく、
-
股関節の筋力
-
太ももの筋力
-
足関節の動き
-
片脚でのバランス
-
着地姿勢
-
動的な膝のコントロール
なども確認することがあります。
若年サッカー選手では、左右差や動的膝外反などの神経筋コントロールの問題も傷害リスクと関連することが報告されています。
④ 膝の中・奥が痛い|離断性骨軟骨炎にも注意
頻度はオスグッド病ほど高くありませんが、見逃したくない病気の一つが**離断性骨軟骨炎(Osteochondritis Dissecans:OCD)**です。
膝の軟骨の下にある骨(軟骨下骨)に病変が生じる病気で、成長期にも発症します。
初期には、
-
運動すると膝の奥が痛い
-
サッカー後に膝が痛む
-
腫れる
-
休むと少し改善する
といった比較的分かりにくい症状の場合があります。
病変が進行すると、引っかかり感やロッキングなどが生じることもあります。
2024年のレビューでは、小児・若年者の離断性骨軟骨炎について、レントゲンは初期評価に用いられ、MRIは病変や軟骨の状態・安定性を評価して治療方針を考えるうえで重要とされています。
さらに2026年のレビューでは、成長期で安定した病変では保存療法が基本となる一方、病変の安定性や治癒経過によって治療を個別に判断する必要性が強調されています。
「ただの使いすぎ」と決めつけず、長期間続く膝の深部痛は一度評価することが大切です。
⑤ ひねった瞬間から痛い|半月板・靱帯損傷
ここまでの病気とは少し性質が違います。
サッカー中に、
「切り返した瞬間に膝をひねった」
「相手と接触して膝がねじれた」
「着地した瞬間に膝がガクッとなった」
という明確な受傷機転がある場合には、
-
前十字靱帯損傷
-
内側側副靱帯損傷
-
半月板損傷
-
膝蓋骨脱臼・亜脱臼
-
骨折
などの外傷を考える必要があります。
特に、
「ブチッという感じがした」
「すぐに膝が腫れてきた」
「膝が抜ける」
「膝が伸びない」
「体重をかけられない」
といった症状がある場合は、練習を続けず早めに整形外科を受診してください。
「成長痛だから大丈夫」は本当?
成長期の膝痛をすべて「成長痛」と考えるのはおすすめできません。
オスグッド病などは確かに成長と関連します。
しかし、これは単純に「身長が伸びるから膝が痛くなる」という意味ではありません。
成長途中の組織に、スポーツによる繰り返しの負荷が加わって起こる障害です。
そのため、
「成長が終わるまで我慢しよう」
ではなく、
何が痛んでいるのかを確認し、必要に応じてサッカーの負荷を調整する
ことが大切です。
サッカーは休んだ方がいい?
これは症状によって異なります。
オスグッド病などのオーバーユース障害では、全員が完全にサッカーを禁止しなければならないわけではありません。
一方で、
-
走ると明らかに痛い
-
足を引きずる
-
日常生活でも痛い
-
翌日まで強い痛みが残る
状態で無理に練習を続けるのはおすすめできません。
ダッシュやキック、ジャンプの量を減らすなど、症状に合わせた負荷調整を行います。
2026年のオスグッド病の治療レビューでも、基本は保存療法であり、運動療法や活動量調整などが治療の中心となっています。一方、どの保存療法が最も優れているかについては、まだ質の高い比較研究が不足しています。
つまり、
「完全に休む」か「痛くても全部やる」か
という二択ではありません。
リハビリでは何をする?
原因によって内容は異なりますが、成長期のサッカー選手では、
-
大腿四頭筋の柔軟性
-
ハムストリングスの柔軟性
-
ふくらはぎの柔軟性
-
股関節筋力
-
膝周囲筋力
-
足関節可動域
-
片脚でのバランス
-
スクワット動作
などを評価します。
痛い部分だけをマッサージして終わるのではなく、なぜその膝に負担が集中しているのかを考えることが重要です。
また、練習量が急に増えた、試合が連続している、複数チームでプレーしている、休養日が少ないといった場合には、身体だけでなくトレーニング負荷も見直します。
2025年のサッカー傷害に関するアンブレラレビューでも、傷害は一つの原因だけで発生するのではなく、多数の内的・外的因子が複雑に関係することが示されています。
いつサッカーに復帰できる?
「2週間休んだから復帰」というように、日数だけで決めるものではありません。
病気やケガによって異なりますが、一般的には、
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普通に歩いて痛くない
-
階段で強く痛まない
-
スクワットができる
-
片脚動作ができる
-
ジョギングができる
-
ダッシュができる
-
切り返しができる
-
ジャンプ・着地ができる
-
キック動作で痛みが悪化しない
などを段階的に確認します。
そして、
ジョギング → ダッシュ → ボール練習 → キック → 対人練習 → 通常練習 → 試合
というように、競技負荷を徐々に上げていきます。
途中で痛みが強くなる場合は、負荷を一段階戻して再評価します。
こんな膝痛は早めに整形外科へ
特に次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
-
数週間以上膝痛が続いている
-
足を引きずっている
-
膝が大きく腫れている
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体重をかけられない
-
膝が完全に伸びない
-
膝が引っかかる・ロックする
-
膝が抜ける感じがある
必要に応じてレントゲン、超音波検査、MRIなどを行い、原因を確認します。
よくある質問
オスグッド病は成長期のサッカー選手でよくみられる代表的な膝のスポーツ障害ですが、すべての膝痛がオスグッド病ではありません。痛む場所、年齢、受傷機転、腫れなどから鑑別します。
痛みの程度と原因によります。痛みをかばって走っている、日常生活でも痛い、翌日まで強く痛む場合などは負荷を下げる必要があります。
痛みが改善したあとも脛骨粗面の出っ張りが残ることがあります。出っ張りが残っていても痛みがなければ、通常はそれ自体が大きな問題になるわけではありません。
原因によります。柔軟性改善は重要ですが、筋力、身体の使い方、練習量なども関係します。ストレッチだけですべての膝痛が治るわけではありません。
必ずしもそうとは限りません。半月板・靱帯・軟骨など、レントゲンだけでは十分に評価できない組織もあります。症状や診察所見によってMRIなどを検討します。
まとめ|子どもの「膝が痛い」は、痛む場所を確認しましょう
サッカーをしている子どもの膝痛には、さまざまな原因があります。
特に、
膝のお皿より下が痛い
→ オスグッド病
膝のお皿の下端が痛い
→ Sinding-Larsen-Johansson病
膝のお皿周囲・奥が痛い
→ 膝蓋大腿関節周囲の痛み
膝の中・奥が長期間痛い
→ 離断性骨軟骨炎など
ひねったあとから痛い
→ 半月板・靱帯損傷など
というように、**「どこが痛いか」「いつ痛いか」「どのように痛くなったか」**が診断の大切な手がかりになります。
そして最も避けたいのが、
「子どもだから成長痛でしょう」
と決めつけて、痛みを我慢しながらサッカーを続けることです。
成長期は身体が大きく変化する時期だからこそ、練習量、柔軟性、筋力、身体の使い方、休養などを総合的に考える必要があります。
適切な時期に原因を評価し、負荷を調整しながらリハビリテーションを行うことが、目の前の試合だけではなく、長くサッカーを続けられる身体を守ることにつながります。
参考医学論文
-
Rodrigues DR, et al. Biomechanical alterations in Osgood-Schlatter disease: a systematic review. Research in Sports Medicine. 2025.
オスグッド病のある成長期の患者では、大腿四頭筋・腓腹筋・ヒラメ筋の硬さ、膝伸展筋力などの身体的特徴が報告されています。 -
Treatments for Osgood Schlatter Disease: A Systematic Review of the Literature. 2026.
オスグッド病では保存療法が治療の基本であり、難治例を除いて手術治療は通常必要ありません。 -
Akkawi I, et al. Juvenile Osteochondritis Dissecans: Current Concepts. 2024.
小児・若年者の離断性骨軟骨炎について、診断・画像評価・保存療法・手術療法をまとめたレビューです。 -
Injury risk profile for soccer players: identification of the risk factors for soccer-related injuries—an umbrella review. Research in Sports Medicine. 2025.
サッカー傷害は単一の原因ではなく、身体的要因や負荷など多数の因子が複雑に関係することが示されています。
監修者情報
院長 大塚 貴史
日本整形外科学会認定 整形外科専門医。
オスグッド病をはじめ、成長期の膝痛、サッカーによるスポーツ障害、足関節捻挫、半月板・靱帯損傷などの整形外科疾患を診療しています。
成長期のサッカー選手の膝痛では、痛む場所だけでなく、成長段階、練習量、筋肉の柔軟性・筋力、股関節や足関節の機能、走行・ジャンプ・着地・切り返しなどの動作を総合的に評価することが重要です。
症状に合わせた負荷調整とリハビリテーションを行い、痛みの改善だけでなく、安全なサッカー復帰と再発予防を目指します。