2026年9月10日

「先生、膝を曲げたらパキパキ鳴りますねん」
「階段を上るとミシミシいうんです」
「しゃがんだ時にゴリゴリ鳴るけど、軟骨すり減ってます?」
これは整形外科の診察室で、本当によく聞く相談です。
膝から、パキッ・ポキッ・ゴリゴリ・ミシミシと音がすると、「このまま膝が悪くなるのでは?」と心配になりますよね。
でも最初にお伝えしたいのは、
膝が鳴る=膝が悪い、ではありません。
実は、痛みのない人でも膝の音は非常によくみられます。
一方で、膝の音に痛み・腫れ・引っかかり・動かしにくさなどを伴う場合には、変形性膝関節症や半月板など膝の状態を確認した方がよいことがあります。
今回は「膝のパキパキ音」について、最新の医学研究をもとにわかりやすく解説します。
膝の「パキパキ」「ゴリゴリ」には名前があります
膝を動かした時に感じるパキパキ、ゴリゴリとした音や感覚は、医学的には**crepitus(クレピタス・軋轢音)**などと表現されます。
膝を曲げ伸ばしすると、大腿骨、脛骨、膝蓋骨(お皿)、半月板、腱、靱帯など、さまざまな組織が動きます。
そのため、膝から音がするという現象自体は珍しいものではありません。
ここで注意したいのが、
「膝が鳴るのは関節の中の気泡が弾けているから」
「腱が骨を乗り越えている音だから」
などと、音だけから原因を決めつけることです。
膝の音には複数の原因が考えられますが、音だけを聞いて「この組織が原因」と特定できるわけではありません。
最新研究|痛くない人でも36%に膝の音
2025年にBritish Journal of Sports Medicineに発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、103研究・36,439人が解析されました。
その結果、膝の軋轢音は、
一般人口:約41%
膝に痛みがない人:約36%
変形性膝関節症の人:約81%
に認められました。
つまり、
痛くない人でも、およそ3人に1人は膝の音がする
という結果です。
これは非常に重要です。
膝から音がするというだけで、「軟骨がなくなっている」「膝が壊れている」と考える必要はありません。
じゃあ、膝の音は完全に無視していいの?
ここが少し難しいところです。
先ほどの2025年の研究では、膝の音は痛みのない人にも多く認められる一方、レントゲン上の変形性膝関節症がある人では、膝の軋轢音がみられるオッズが高いことも報告されています。
さらにMRIでみられる一部の変形性膝関節症関連所見とも関連していました。
ただし、研究者らはこのエビデンスの確実性を低~非常に低いと評価しています。
ですから、音がする=変形性膝関節症でもなければ、痛くないから絶対に問題なしとも単純には言えません。
大切なのは、
「音がするか」だけではなく、「ほかにどんな症状があるか」
を見ることです。
特に注意したいのは「音+痛み」
例えば、
-
階段で膝が痛い
-
しゃがむとお皿の周囲が痛い、立ち上がる時に痛い
-
膝が腫れている、膝に水が溜まる
-
引っかかる感じがする、急に膝が伸びなくなる
といった症状を伴う場合には、一度膝の状態を確認した方がよいでしょう。
膝のお皿の周囲や裏側が痛む膝蓋大腿部痛でも、膝の軋轢音がみられることがあります。
ただし、膝蓋大腿部痛についても、音の有無と痛みの強さが単純に一致するわけではありません。
「パキッ!」と鳴って急に痛くなった場合は別です
以前から膝がパキパキ鳴っている場合と、
スポーツ中に突然「ブチッ」「パキッ」と音がして、その直後から痛くなった
場合は分けて考える必要があります。
外傷をきっかけに突然音がして、強い痛み・急激な腫れ・体重をかけられないなどが出た場合には、靱帯損傷、半月板損傷、骨軟骨損傷などを考える必要があります。
これは「昔から膝がパキパキ鳴る」という話とは別です。
早めに整形外科を受診してください。
音がするだけなら運動してもいい?
痛みや腫れがなく、日常生活に問題がないのであれば、膝の音だけを理由に運動をやめる必要は通常ありません。
むしろ、「音が鳴るから怖い」と必要以上に膝を使わなくなると、活動量が低下してしまいます。
特に変形性膝関節症では、適切な運動療法は治療の重要な柱の一つです。
大腿四頭筋など膝周囲の筋力だけでなく、股関節の筋力、柔軟性、身体の使い方なども確認しながら運動することが大切です。
当院では「音」ではなく膝全体を診ます
「膝がパキパキ鳴る」という患者さんでも、全員に同じ治療が必要なわけではありません。
まず、
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いつから鳴るのか
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どんな動作で鳴るのか
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痛みを伴うのか
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腫れや水があるのか
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引っかかりがあるのか
などを確認します。
必要に応じてレントゲンなどの画像検査を行い、変形性膝関節症などが隠れていないかを評価します。
そして治療が必要な場合には、原因や症状に応じて薬物療法、注射治療、物理療法、運動器リハビリテーションなどを組み合わせます。
特に運動器リハビリでは、膝だけを見るのではなく、太ももの筋力・股関節の機能・膝の動き・歩き方なども確認していきます。
よくある質問
膝の音だけで将来変形性膝関節症になるとは言えません。
2025年の研究では膝の軋轢音と変形性膝関節症の画像所見との関連が報告されていますが、痛みのない人でも約36%に膝の音が認められています。音だけで病気を判断することはできません。
そのようには言えません。
膝の音があるだけで、音が鳴るたびに軟骨が削れていると考える医学的根拠はありません。
痛み、腫れ、引っかかり、動かしにくさなどがなく、昔から音がするだけであれば、過度に心配する必要はないことが多いです。
ただし、新しく音が出始めた、症状が変化した、心配が強い場合には一度相談してください。
音だけで中止する必要は通常ありません。
ただし、スクワットで痛みが出る場合には、負荷量やフォームを見直した方がよい場合があります。
音+痛み、腫れ、引っかかり、膝崩れ、可動域制限がある場合には受診をおすすめします。
外傷時に突然大きな音がして、その後に強い痛みや腫れが出た場合には早めに受診してください。
まとめ|「パキパキ鳴る=膝が壊れている」ではありません
膝のパキパキ、ゴリゴリという音は、非常によくみられる現象です。
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音と一緒に痛む
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膝が腫れる・水が溜まる
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引っかかる・膝が伸びない
-
外傷後に突然音がした
という場合には話が変わります。
大切なのは、
「どんな音がするか」より「音以外の症状があるか」です。
「先生、私の膝パキパキなりますねんけど大丈夫ですか?」
痛みも腫れもなく、音だけなら大丈夫なことが多いですよ。でも、痛みや腫れを伴うなら、一度その膝を診せてください。
最新医学論文
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Couch JL, et al. Noisy knees – knee crepitus prevalence and association with structural pathology: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine. 2025.
103研究、36,439人を対象とした大規模システマティックレビュー・メタ解析です。膝の軋轢音は一般人口の約41%、無症状者の約36%、変形性膝関節症患者の約81%に認められました。また画像上の変形性膝関節症との関連も認められましたが、エビデンスの確実性は低~非常に低いと評価されています。
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Kasitinon D, et al. Physical Examination and Patellofemoral Pain Syndrome: an Updated Review. Curr Rev Musculoskelet Med. 2021;14:406-412.
膝蓋大腿部痛の診察についてまとめたレビューです。膝の軋轢音は膝蓋大腿部痛のある人でみられることがありますが、軋轢音と患者さんが感じる痛みなどの臨床症状は必ずしも一致しないことが示されています。
監修者情報
整形外科おおつかクリニック
院長 大塚 貴史
膝から音がすると、「軟骨が削れているのではないか」と心配される患者さんは非常に多くいらっしゃいます。
しかし、膝の音は痛みのない方にもよくみられ、音がするだけで膝の病気と判断することはできません。
重要なのは、痛み、腫れ、関節水腫、引っかかり、膝崩れなどを伴っていないかを確認することです。
当院では、必要に応じて画像検査を行い、治療が必要な場合には薬物療法、注射治療、物理療法、運動器リハビリテーションなどを組み合わせて治療を行います。
「膝の音が最近気になってきた」「音だけでなく痛みも出てきた」という方は、一度ご相談ください。